岡山県後月郡芳井町三原鉱山の斑銅鉱に富む鉱石中の銅・ビスマス硫塩鉱物を研究している過程で,ウィチヘン鉱(wittichenite,Cu3BiS3)に非常に似た光学性を持つが,銅・ビスマスに加えて鉄と鉛を含む硫塩鉱物を発見した。この鉱物の理想化学式はCu4FePbBiS6である。
国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物名委員会にmiharaite(三原鉱)として申請し,1976年4月に同委員会に認可された。鉱物名は最初に発見された三原鉱山の名前に因んで命名されたものである。
三原鉱は三原鉱山の最深レベルである本•第11~12レベルで灰鉄輝石,ザクロ石,緑れん石スカルンの黄銅鉱や斑銅鉱に富む鉱石中の斑銅鉱に含まれて産するが,肉眼的大きさのものは見つかっていない。
三原鉱は黒色不透明,金属光沢で,0.3mm以下の微細な粒状あるいは不規則な塊状を呈して,斑銅鉱中に黄銅鉱や方鉛鉱と密接に共生して産する。顕微鏡下で灰白色から淡い灰色と弱い多色性を示し,異方性は中程度で帯青灰色~ピンク味を帯びた褐色まで変化する。光学的性質は非常にウィチヘン鉱と似ており,両者の区別は非常に難しい。
EPMAの分析値ではCu4.09Fe1.00Pb1.01Bi1.00S5.91で,その理想式はCu4FePbBiS6と考えられている。
三原鉱の結晶学的データは斜方晶系,空間群Pbmm(Pb2mまたはPb2/m),格子定数:a=10.854(4), b=11.985(4),c= 3.871(l)A,Z=2,格子体積=503.6(3) A3,密度(計算値)=6.06g/cm3である。
その後,三原鉱は岡山県苫田郡奥津町井茂岡鉱山産鉱石中にも見出された。そのほか,世界の3,4の鉱山からもその産出が報告されてきている。
(文責:北風嵐)