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【特殊な鉱石組織】 山形県大張鉱山産斑銅鉱中のウィチヘン鉱(Cu3BiS3)および黄銅鉱の離溶二重格子構造について

 山形県朝日村の大張鉱山の鉱床や鉱石鉱物については渡邊(1937,1938)により詳しく研究されているが,まだEPMAの無い時代で,反射顕微鏡での観察であったが,数種のBi鉱物を見出し記載している。その中で下図のような世界的に珍しい斑銅鉱中に黄銅鉱とCu-Bi硫塩鉱物の二重格子組織を発見している。このCu-Bi硫塩鉱物はその光学的性質からクラプロート鉱と推定した。この組織は初生的には斑銅鉱固溶体と生成し,その後の冷却過程で黄銅鉱とクラプロート鉱が離溶したものと推定している。

大張鉱山産斑銅鉱中のウィチヘン鉱(青色)と黄銅鉱(黄色)の二重格子組織(1)
大張鉱山産斑銅鉱中のウィチヘン鉱(青色)と黄銅鉱(黄色)の二重格子組織(1)
大張鉱山産斑銅鉱中のウィチヘン鉱(青色)と黄銅鉱(黄色)の二重格子組織(2)
大張鉱山産斑銅鉱中のウィチヘン鉱(青色)と黄銅鉱(黄色)の二重格子組織(2)

 この鉱物については苣木ほか(1974)がEPMAを用いて詳細に検討した結果,ウィチヘン鉱であることが解った。

  • 苣木浅彦, 島敞史, 北風嵐(1974):"ELECTRON PROBE MICROANALYSERによるCu窶「Bi窶「S系鉱物の化学組成に関する研究", 岩石鉱物鉱床学会誌, 69, 32-34.
  • 渡邉萬次郎(1937):"山形縣大張,本郷兩山の地質礦床,特に種々なる銅礦物の共生に就て(1)", 岩石鉱物鉱床学会誌, 18, 259-269.
  • 渡邉萬次郎(1938):"山形縣大張,本郷兩山の地質礦床,特に種々なる銅礦物の共生に就て(2)", 岩石鉱物鉱床学会誌, 19, 27-32,38-79.

(文責:北風嵐)