成因別鉱床(ミシシッピーバレー型鉱床)

アメリカ、マイアミ州ツリ・ステイト鉱山産巨大方鉛鉱結晶
アメリカ,マイアミ州
ツリ・ステイト鉱山産巨大方鉛鉱結晶

【ミシシッピーバレー型鉱床】
 炭酸塩岩層(石灰岩または苦灰岩)を交代して層状に産する鉛・亜鉛鉱床が,北米のミシシッピー川中流域ではじめて発見されことから,このタイプの鉱床をミシシッピーバレー型鉱床という。現在では,世界各地でこの種の鉱床が発見されている。特徴として,極めて粗粒の方鉛鉱や閃亜鉛鉱(鉄が少ない種類で,半透明で黄褐色を示す)の結晶からなり,同様に蛍石および重晶石の巨大な結晶を多量に伴うことである。 また,スカルン鉱物を伴わず,熱水活動をもたらしたと思われる火成岩類も近くにまったく存在しない。そのために,当初は熱水性鉱床かどうか疑問視されたこともあった。しかしその後の研究で,閃亜鉛鉱に含まれる微細な流体包有物中の液体の化学組成が近傍の油田地域の油田塩水と酷似すること,また閃亜鉛鉱や方鉛鉱の硫黄同位体比が原油に含まれる硫黄の同位体比に近似していることなどが判明した。これらのことから,現在では油田塩水に起源を持つ高塩濃度(15%NaCl濃度以上)で比較的低温(20~250℃)の熱水から生成したと考えられている。

アメリカ,マイアミ州ツリ・ステイト鉱山の遠景
アメリカ,マイアミ州
ツリ・ステイト鉱山の遠景
(灰色の2つの高まりは廃石を
積み上げてできた人工の山である。)

 このタイプの鉱床は,山岳地帯にある金属鉱山の鉱床と違って北米では大平原の地下に層状に分布することが多いので,立抗を掘り,水平坑道を展開する方式で鉱石が採掘されている(右図参照)。
 北米だけでなく,最近では中央ヨーロッパやオーストラリア,アフリカ,ブラジル,カナダ,中国にもこの種の鉱床が数多く発見されている。