成因別鉱床(キースラーガー鉱床)

【キースラーガー型鉱床】
 キースラーガーという言葉は,ドイツ語のKieslagerstattenに由来し,Kiesは硫化鉄鉱を,lagerstattenは鉱床を意味する。北欧の硫化鉄鉱鉱床と日本の層状含銅硫化鉄鉱鉱床が類似しているので,日本の層状含銅硫化鉄鉱鉱床もキースラーガーと呼ばれるようになった。
 したがって,キースラーガーとは硫化鉄に富む層状含銅硫化鉄鉱床をいう。別子鉱山(愛媛県)の層状含銅硫化鉄鉱鉱床は規模が大きく典型的なキースラーガー型鉱床であったため,英語圏ではキースラーガー型鉱床というよりも別子型鉱床という方が通りが良い。通常1~2%の銅を含み,亜鉛も鉱床によっては数%に達する場合がある。中生代以前に噴出した塩基性火山岩類(玄武岩溶岩および同質凝灰岩からなり,大部分は広域変成作用を受けて緑色片岩になっている)に関連した鉱床で,それらにほぼ整合的に胚胎した層状ないしレンズ状鉱体からなる。鉱石鉱物は黄鉄鉱を主体とし,常に黄銅鉱を伴い,まれに斑銅鉱,方鉛鉱,閃亜鉛鉱などの硫化鉱物,金銀などの金属鉱物,そして微量のレアメタルなどを含有する。緻密で塊状を呈することが多いが,堆積岩と細かい互層をなすこともある。
 キースラーガー型鉱床は,後述するキプロス型銅鉱床と類似する点が多い。
 日本では三波川変成帯中に多くのキースラーガー型鉱床が知られており,かつては日本で採掘された銅の35%はこのタイプの鉱床からであった。現在稼行されている鉱山はない。
 その多くは広域変成作用を受けおり,ここでは変成鉱床の一つとして分類している。

モンゴル,アルタン・ウル鉱床産含銅層状硫化鉄鉱石(ボーリングコア)
モンゴル,アルタン・ウル鉱床産
含銅層状硫化鉄鉱石(ボーリングコア)

 モンゴル国アルタン・ウル(Altan Uul)地域では,層状硫化鉄鉱床に金を伴うことから,金をターゲットにした探鉱が盛んにおこなわれている。
 この型の鉱床の地質学的特徴は,大西洋中央海嶺や東太平洋海膨などのプレート拡大軸で発見されている現世の海底熱水成鉱床に類似している面がある。

【キプロス型銅鉱床】
 オフィオライトの一部である玄武岩質火山活動にともなって生成した,レンズ状~塊状をなして産する含銅硫化鉄鉱床で,東地中海上のキプロス島に典型的な例が知られている。ちなみに,キプロスの語源は古代ギリシャ語の銅に由来する。
 含銅硫化物鉱床は,オフィオライトの最上部を構成する海底玄武岩質溶岩の直上に胚胎している。黄鉄鉱を主体とし,少量の黄銅鉱,閃亜鉛鉱,白鉄鉱などの鉱石鉱物からなり,石英,石膏などを伴う。トルコ,カナダのニューファンドランド島,オマーンやフィリッピンのオフィオライトなどにもこの型の鉱床の存在が知られているが,いずれも低品位(銅1~2%)で,しかも鉱床の規模が小さいことから,銅資源としての重要度は低い。