希金属であるインジウムは,液晶テレビ,プラズマテレビやパソコン,携帯電話の液晶ディスプレイにインジウム錫酸化物ターゲットとして使用されており,近年,需要が急増したため,その資源の確保が求められている。
インジウムを含む鉱物として,インジウム銅鉱(Roquesite)CuInS2などがあるが,これらが稼行の対象となることはない。インジウムは普通,閃亜鉛鉱中の亜鉛を一部置換した固溶成分として含有されており,これが亜鉛精鉱の製錬の際,副産物として回収され,資源として使用されている。例えば,ボリビアの多金属熱水鉱脈(ゼノサーマル型熱水鉱床)から産する閃亜鉛鉱中には下図で示したように,0.0~2.0%のインジウムが固溶体として含有される。この閃亜鉛鉱はしばしば黄錫鉱,黄銅鉱,錫石などを伴う。この場合,黄錫鉱Cu2FeSnS4中にも0.0~6.0%のインジウムが固溶体として含有され,錫だけでなくインジウムとしても重要な鉱石鉱物である(付図参照)。
同様の傾向は北海道豊羽鉱山(2006年休山)産の閃亜鉛鉱にも見られ,亜鉛精鉱(平均品位56%)中0.1~0.2%のインジウムを含有し,亜鉛製錬の副産物として年10~14トンの金属インジウムを産出した。この産額は当時,1鉱山としては世界第1位であった。また,中国壮族自治省大廠鉱山産の錫鉱石中と共存する閃亜鉛鉱にも上記と同様な含有量でインジウムが含有され,これまた重要な資源である。
リチウム(Li)はパソコン,携帯電話をはじめハイブリッド車,電気自動車,太陽光発電などの二次電池(充電式電池)としてリチウムイオンやリチウム・水素電池の需要が激増し,世界のリチウムイオン電池は,生産量の約50%を日本のメーカーが占めている。 しかし,原料のリチウム(化合物)はすべて輸入頼りで,最大の輸入元はチリである。 南米とくにチリ,ボリビアおよびアルゼンチンの三国の国境地帯にはAtacama(チリ),Uyuni(ボリビア),Olaroz, RinconおよびHombre Muerto(以上アルゼンチン)などの塩湖があり(付図参照),この地帯だけでも世界のリチウム埋蔵量の約8割を占めている。
これらの塩湖の水(鹹水)にはカリウム,ナトリウム,マグネシウム,カルシウムおよびカリウムなどの元素が塩化物,硫酸塩,硝酸塩,炭酸塩として溶解し,ときにはホウ素やヨウ素なども伴う。もともと鹹水(かんすい)からは肥料になる硝酸カリウムや硫酸カリウムを主に生産し,リチウムは副産物であった。鹹水のリチウム濃度は約0.2%程度で,これをポンプアップし,蒸発池で8~15ヶ月間かけて約Li0.6~0.9%に濃集し,さらにソーラーポンドで約8~12ヶ月かけて約Li6%に濃縮して精製工場に送り,化学的に炭酸リチウムLiCO3や水酸化リチウムLi(OH)の製品にしている(SQM:Sociedad Quimica y Minera de ChileおよびChemetallの資料による)。
アタカマ塩湖の北方約150kmのボリビア国境近くにあるAscotan塩湖では現在沈殿している硝酸カリウム(硝石)や硫酸カリウムが化学的に沈殿し,堆積している。これを肥料として採集されている(写真参照)。塩湖の鹹水や沈殿物にもリチウムを含んでいるが,現在のところ,リチウムは生産されていない。
もともとチリ北部はチリ硝石NaNO3の世界的産地で,第一次世界大戦頃までは鉄砲用火薬の重要な原料として注目を浴びていた地帯である。その主要生産地であったAntofagasta地方はアタカマ塩湖の北西約100kmにあり,現在も小規模ながらチリ硝石を採掘し,肥料,ホウ素やヨウ素化合物を生産している。この鉱石にもリチウムが含まれるが,リチウムは回収されていない(写真参照)。
上記Ascotan塩湖の東方約170kmにボリビア,ウユニUyuni塩湖があり,リチウム埋蔵量世界第一位の規模を有している。今のところ殆ど未開発のままである(写真参照)。ごく一部原住民の食用岩塩として採取されているのみである。リチウムの大資源として,今後の開発が世界の注目を浴びています。
一方,中国チベット自治区Zabuye塩湖(炭酸塩),青海省Dongtai-Xitai塩湖(硫酸塩)などでもすでにリチウムの生産が開始され,今後一層の開発が期待される。しかし,高度(4.500m),気候などの条件やリチウム精製工場(福建省福州市)までの距離(3,500km)などの問題がある。