古遠部鉱山は秋田県鹿角郡小坂町字古遠部に位置した黒鉱鉱床で、湯ノ沢・大黒沢東・大黒沢西・曲屋沢・東又沢・衛星鉱体などの6鉱体が知られていた。 鉱体は主として下部から珪鉱、黄鉱、黒鉱、鉄石英帯の順序に連続して配列する鉱体であるが、珪鉱の上部に分布する緑色凝灰岩中に硫化鉱物が濃集する鉱体や堆積性構造(級化層理)を有する鉱体(湯ノ沢西部鉱体)も認められた。 これらの全ての鉱体を玄武岩溶岩が覆っている。大黒沢東・西鉱体の黒鉱は特に金6-8g/t、銀200-300g/tと金銀品位が高く、銀価格高騰時には生産額の約半分を占めた時期もあった。大黒沢東鉱体の黒鉱最上部の斑銅鉱質鉱石から銀鉱物の一つである新鉱物“古遠部鉱”が発見されている(本HP【研究成果)【新鉱物】古遠部鉱を参照】。
(文責:北風嵐)
【参考文献】
田中 威・盧 光映(1969)古遠部鉱山の地質・鉱床。鉱山地質、19, 312~332。
黒田英夫・小田島吉次(1975):古遠部鉱山の鉱床と探査(I),特に珪鉱帯について。鉱山地質、25、195-207。
黒田 英夫(1977)古遠部鉱山の鉱床と探査-2-古遠部黒鉱鉱床の生成機構。鉱山地質。27、9-22。
黒鉱の反射顕微鏡写真:以下古遠部鉱山産鉱石にみられた特徴的な鉱石組織の反射顕微鏡写真を掲げた。古遠部鉱山からは新鉱物:古遠部鉱や我が国では産出の珍しい含砒素レニエル鉱が発見されている。両鉱物の詳細は本HPの【研究成果】【新鉱物】および【日本新産・希産鉱物】に記載されているので、顕微鏡写真のみを紹介している。
写真略号:py:黄鉄鉱、cp:黄銅鉱、gn:方鉛鉱、sp:閃亜鉛鉱、ten:四面砒銅鉱、rn:レニエル鉱、fualr:古遠部鉱、jal:輝銀銅鉱、el:エレクトラム、dg:方輝銅鉱。